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「翼」第4号:環境安全部だより


環境安全部だより テレビで大人気 ダブルストレーラーの安全運行への取り組み

ダブルストレーラー ダブルストレーラー
(写真の牽引車はケンワース製)
全長30メートル、総重量117トン。
タイヤの数はなんと 34本も

ダブルストレーラー

宇部興産は、総延長約30kmの日本で最も長い私道である「宇部興産専用道路」で、美祢市の伊佐セメント工場と宇部セメント工場間を結んでいます。

一般道は道路交通法により走行できない巨大なダブルストレーラーを運行しており、40トン積みトレーラー2両連結車の姿を一目見ようと、全国各地から見学者が訪れています。

ここでは市街地を通り抜けている専用道路における地域の安全を確保しながらセメント供給の責務を果たすため、様々な安全運行対策を講じています。乗務員教育は助手席同乗に始まり、空車走行トレーニングを中心に1~2ヶ月もの訓練期間を設け、指導者の同乗による走行試験に合格したドライバーだけがあの巨大トレーラーを運転することができます。

車両整備では専用の整備工場を擁し、始業前点検はもちろんのこと月次点検、年次点検によって入念な整備を行い安全輸送に務めています。また、伊佐セメント工場には車両の洗浄施設を設け、すべてのトレーラーはきれいに洗浄された後に送り出され、環境保全にも十分な配慮をしています。
さらに、専用道路内には多数のセンサーを設置し車両の運行を監視しています。車両ごとにセンサー間の通過時間を計測し、スピード違反をしているトレーラーは管理事務所の画面上に情報が表示する仕組みとなっており、ドライバーの安全運転意識を高め、違反ドライバーにはペナルティが課せられます。

このように、ダブルストレーラーの安全運行は教育、整備、運行管理を三本の柱として、高い水準で需要の続くセメント生産の社会的責務を果たせるよう、日夜努力しています。

こぼれ話

興産大橋を背景に走るケンワース製T608型 興産大橋を背景に走る
ケンワース製T608型
勢ぞろいしたケンワース製T604型 勢ぞろいしたケンワース製
T604型
待機中のいすゞ自動車製LDG-EXZ52AJ改 待機中のいすゞ自動車製
LDG-EXZ52AJ改
点検を終え洗車されたケンワース製T609型(奥は三菱ふそう製FV50L型) 点検を終え洗車された
ケンワース製T609型
(奥は三菱ふそう製FV50L型)

遮断機が下りると巨大なトレーラーが走り抜ける、日本でも珍しい道路の踏切はすっかりテレビでもおなじみになりましたが、ここを走行するダブルストレーラーは全長30メートルの車体に80トンもの荷物を積んで朝6時半から夜10時まで運行され、1日の走行距離は700キロメートルに達します。

その巨体と機能美を追及した美しい車体デザインはテレビでも良く知られていますが、運行システムについてはあまり知られていないと思います。車両には最先端IT技術を投入した「特大車ランシステム」が搭載され、ETCセンサーと無線LANによって車両の運行が管理されています。また、経路上に何箇所かの交差点がありますが、ダブルストレーラーがスムーズに通過できるように、このシステムによって信号のタイミングが自動で調整されています。

さらに、道路上にはチェックポイントが設置され、運行計画に従って通過時刻が設定されます。ドライバーはチェックポイントを定められた時刻から秒レベルの誤差で通過する運転テクニックでトレーラーを操り、運行時刻の正確さについては新幹線にも決して負けていません。また、80トンもの石灰石の積込み、荷下ろしはいずれも最短わずか3分で行うことができ、巨体のイメージとは全く違った、非常に緻密で繊細な運行を行っています。

トラクター(牽引車)は国内外各社製が導入されていますが、アメリカ製はやはりワイルドな乗り心地なのだとか。また、トラックは6速ギアが普通ですが、ダブルストレーラーは16速もギアがあります。

ルート中最大の難所の興産大橋の上り坂は100メートル進む間に6メートル高度が上昇する急勾配です。ギアは15速、時速70キロで上り始め、速度とエンジン回転数を合わせる神ワザ的なシフトダウンを繰り返し、八分目までに7速までギアを落とし、時速15キロで80トンの荷物を引っ張り上げます。最近はボルボ製の12段フルオートマ車も2台導入されています。

これほどの車体ですので、整備も大変です。
タイヤは全部で34本、それを固定しているボルトの総数はなんと180本。それらを1本の抜けやミスも無く確認しなければなりませんし、ジャッキアップともなれば非常に慎重な作業が必要となります。日本にトラックの整備をする人は大勢いますが、こんな大きなトレーラーを整備できるのは日本中で自分たちだけしかいないと自負し、繊細な作業と入念な再確認を繰り返すその整備風景はまさに一見さんお断りのプロ中のプロの世界です。

担当者から一言

運行管理の方、ドライバーの方、整備の方、その他ダブルストレーラーに関係する皆さんが、日本ではここにしかない総重量120トンの車両を運行することにプライドを持って業務に取り組んでおられることがひしひしと伝わってきます。 毎日運行終了後に洗車が行われ、きれいになって翌日の運行に備えて車輪を休めるダブルストレーラーの後姿に、日本のセメント供給を支えているというプライドを感じるのは私の気のせいではないはずです。
(担当:中西 貴之)