MENU

アメリカの歯医者には多くの専門がある話 - USA -

No.511/2020.07
化学カンパニー・電池材料開発部/ 田渕 順次
画:クロイワ カズ

電池用の電解液工場立ち上げの技術担当として、アメリカのミシガンに派遣されたときの話です。

あるとき気が付くと、上の前歯2本がグラグラです。「一般歯科」(General dentist)で診て貰ったところ、抜歯と根の治療が必要とのことで、その専門の「根管治療医」(Endodontics)を紹介され、そこで抜歯してもらいました。数日間、前歯のない状態が続きました。

その時です。東京本社の広報から取材に来るというので受けることにしました。現れたのは、チャーミングな女性社員。私が少し緊張気味に話しだすと、彼女はケラケラと声を出して笑うのです。「何が可笑しいのですか」と、少しムッとして訊きました。「だって、歯がないです」と、無邪気な答え。大ショックでした。よし、徹底的に治療するぞ、と即決しました。

最初の先生を再び訪ね、徹底治療したいとお願いしました。すると、「歯周病があるから、専門医に行きなさい」と、また別の医師を紹介してくれました。「歯茎の専門医」(Periodontist)です。そこでの治療は歯茎を切開する大変な手術でした。鎮痛剤も飲まずに痛みに耐えていると「お前は忍者か」とお褒め(?)の言葉。が、治療の途中で、歯茎に埋没した親知らずが見つかり、これの抜歯に、日本で「口腔外科」と言われる「オーラル・サージョン」(Oral surgeon)をも訪ね、そこでは、数本のインプラントも入れてもらいました。

こうして、約1年。無事、全部の歯が揃いました。差し歯、インプラント、クラウンなどの混成部隊ですが、医師からは「ハンサムになった」と言われました。帰国後も、歯だけは絶好調。あの時、歯抜けを笑った女性社員とアメリカの多くの歯医者さんに感謝・感謝です。