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引き籠りの癒しは拍手という話 - SPAIN -

No.518/2021.02
化学カンパニー・企画管理部/ 高橋 一彦
画:クロイワ カズ

スペインのバレンシア州カステジョに4年間駐在し、昨年8月に帰国しました。色々な想い出がありますが、最後の半年はコロナ騒ぎに明け暮れしました。

昨年1月、新型コロナウィルスによる伝染病がアジアで発生したとの報道があり、2月にはイタリーにも感染者が出たと聞いても、スペインではまるで他人ごと。お祭り好きのスペインの人たちは春の祭典の準備に余念がありません。バレンシアといえば、「ファジャス(サン・ホセの火祭り)」が有名で、ユネスコの文化遺産にも登録されています。カステジョでは、古くから街独自の「マグダレナの祭り」があり、街を挙げてお祝いします。毎年、その年のクイーンが選ばれてお祭りを盛り上げますが、新しく選ばれたクイーンたちが3月9日、UBEの会社にも挨拶に来訪、それもあって、我々社員たちも首を長くしてお祭りを待っていました。

が、その裏ではスペインにもコロナの伝染が着々と進んでいたのです。感染源はイタリーからの旅行者とか。行政の対応は迅速でした。お祭りは中止となり、その週の土曜日から各都市がロックダウン(都市封鎖)です。すると、街中も一挙に様変わり。不要不急の外出は禁止、スーパーの食品棚は一時空になりました。それまでスペインでは見向きもされなかったマスクを着けた姿も目立つようになりました。会社では幸運にもUBEの海外オフィスのルートから必要な数量のマスクを購入することができたので、従業員全員に配りました。

仕事は一斉にテレワーク主体となり、殆どの社員は自宅勤務。うっとうしい引き籠り生活は2ヵ月にも及びました。そんな中で意外な癒しとなったのが、夜8時に市民が一斉に家の窓を開けて、医療関係者に感謝の気持ちを表す拍手でした。一緒になって手を叩いていると不思議な一体感が生まれ、何となく元気が出てきたのです。