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帰国直前に失態を演じた話 - CHINA -

No.519/2021.03
経営企画部/ 平本 朋輝
画:クロイワ カズ

上海に4年半駐在し、一昨年10月に帰国しました。中国といえば、商談にはお酒がつきもの。帰国を2ヵ月余りに控えた7月のある日、日本からの出張者Y氏に同行して、上海郊外の取引先を訪問しました。午後のアポイントなので夜の宴会は覚悟していました。案の定、商談は順調に進み、夜は近くのレストランで先方の社長招宴です。宴席は、先方4人、当方3人。Y氏が中央に座りました。ホスト役の社長は40代中頃、精悍な顔つきで如何にも酒豪の雰囲気。社長は盛んにY氏に向かって「乾杯」の杯を挙げます。宴もたけなわ、私が中国語で話しかけると、社長は興に乗ってお酒のピッチが上がります。500mlの「遵義」(パイチューの一種)4本が空になり、すっかりいい気分で宴はお開き。帰り道、社長車で私たちを送ってくれることになり、テスラの高級モデルに乗り込みました。私は助手席の社長の後ろに座りました。Y氏のホテルまで1時間ほどのドライブ。EVだけに静かです。車の振動に身を任せているうちに眠気と吐き気を覚えました。ウトウトしかけた時です。突然、大波の吐き気に襲われて、ゲボッ! 咄嗟の判断で、両手で口元を塞ぎ、社長の頭に嘔吐物を浴びせるという最悪の事態だけは避けることが出来ました。また、自分の背広を拡げて飛沫が車内に飛び散ることも防ぎました。気まずい雰囲気で目的地に着き、お礼とお詫びもそこそこに車から降りて、我が家の浴室に直行です。

後日、正式にお詫びに伺いました。そのとき、チラッと見かけた社長の愛車はポルシェに代わっていました。私の所為でしょうか。

「気にしないで下さい。私の趣味ですから」と、社長は仰言いますが、喉元に刺さった小骨のように今も気になっています。