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レストランから素敵なプレゼントを貰った話 - HONG KONG -

No.393/2010.09
機能品・ファインカンパニー/ 藤井 利則
画:クロイワ カズ

中国向けにリチウムイオン電池材料の売り込みを担当して10年。上海、深せん(しんせん)中心に120回も出張しました。当初30社足らずだった電池メーカーも今では500社を超える活況です。

2005年、その年の最後の出張で深せん(しんせん)へ。仕事は順調に終わり、帰路、香港に立ち寄りました。その日はちょうどクリスマス。豪華ランチでも食べようと、グルメ上司と一緒にとある高級レストランに入りました。

中はクリスマスの電飾でまばゆいばかり。隅の方に空席を見つけました。コートを椅子の背にかけ、当店自慢の飲茶に舌鼓を打ち始めたとき、席の後方から白い煙が立ち昇り、何かが焦げるような臭い。何事かと振り返ると、私のコートが床に落ちて燃えているのです。慌てて立ち上がろうとするより早く、店員がとんできて靴で踏みつけて消火開始。火はすぐに消えました。

どうやら床に設けられた照明の裸電球の上にコートが落ちて、熱で火がついたようです。折り重なって燃えたらしく、ブランドもののベージュのコートに真っ黒な貫通穴が2箇所!それにしても、あの店員の素早い行動に手なれた、いや足なれた靴さばき。この店では同じような事件が時々あるのでは? と疑問がわきました。

「裸電球を床に取り付けるなんて考えられない」と英語でクレームしましたが、分からない素振りで受けつけてくれません。時間もないので仕方なく店を出ました。

コートなしでは寒いし、着れば道行く人がジロジロ見るし、とんでもないクリスマスプレゼントでした。

でも災い転じて福。帰国してから保険会社に焦げたコートを送りつけたら、新品が届きました。これが本当の素敵なプレゼントになりました。