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見知らぬ人から会社を褒められた話 - FINLAND -

No.395/2010.11
機能品・ファインカンパニー/ 渡邊 史信

ドイツ駐在時、出張でフィンランドのヘルシンキを訪問したときのことです。現地のエージェントとホテルのレストランで夕食。その後、1人でバーに入り、片隅でウィスキーを傾けていました。

画:クロイワ カズ

突然、50歳くらいの紳士が話しかけてきました。

「日本人ですか?」

「そうです」と答えると、更に質問してきました。

「日本の会社でUBEというのを知っていますか?」

私は内心ビックリしました。が、平静を装いました。

「知っています。化学やセメントの大手です」

その男が名刺を出して言うには、以前インドネシアでセメントプラントの建設に携わったと。そのプラントはUBEという会社がメイン・コントラクターで、自分の会社はベンダーとして機器を納入したと言います。間違いなく当社のプラント部隊が建設したものです。

「それで、UBEという会社と何かまずいことでも?」

今度は私が質問に回りました。

「いやいや、素晴らしい会社でね。特に、現地のマネジメントがしっかりしている。ベンダーにもよく気配りしてくれて、とても気持ちよく仕事ができました」

私は急に嬉しくなって、照れながら自分の名刺を差し出しました。男は名刺に青色で印刷されたUBEの3文字に目を釘付けにした後、口をポカンと開けて私の顔をまじまじと見つめます。

「これは奇遇だ。こんなところでUBEの人に会えるとは思わなかった」

それから約1時間、UBEの話題で盛り上がりました。グラスを重ねてすっかりいい気分です。最後には、ささやかな感謝の気持ちだと、勘定まで払ってもらいました。このときばかりは、自分の会社に惚れ直しました。