タイの子会社にセールスの責任者として派遣されていたときの話です。中国から大切な顧客が来訪することになりました。奮発してパタヤビーチの高級レストランを予約。早めに空港に出迎えました。午後遅く着いた一行は4人。 その日はパタヤビーチに直行です。
此処での最高の御馳走は何と言ってもシーフード。パタヤの近くには漁港があり、毎日新鮮な魚介類が水揚げされます。その夜も、豪華なロブスターを初め、貝や魚のバーベキューに一行は舌鼓を打ちました。でも、リーダー格のお客はあまり食が進まないようです。聞いてみると、シーフードはそれほどお好きではないとのこと。
翌日は工場見学。その後、近くのレストランで工場の幹部との懇親昼食会が予定されています。私は直ぐに会社のタイ人スタッフ・Bさんに電話を入れ、明日のランチはシーフード抜きにするよう指示を出しました。
当日、工場見学は無事終わり、昼食会が始まりました。中国料理に似たたくさんの前菜を一行は美味しそうに食べました。そして、メインディッシュの登場です。何と、ナマズ! タイ語で「ヤム・プラードゥック・フー」と呼ばれるナマズ料理は、蒸したナマズの身をほぐし、天ぷらのように揚げたもの。タイではかなりの高級料理です。一見、天カスと野菜の混ざったサラダ風ですが、ナマズの頭が添えてあるので魚であることは歴然です。案の定、リーダー格のお客は箸をつけません。
一行を送り出した後、私はBさんを呼びつけて厳しく叱りました。
「シーフードはだめだと注意したじゃないか!」
ところが、Bさんは一向に悪びれた様子はありません。そして、きつい反撃の一言。
「ナマズはシーフードではありませんよ」