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アメリカの110番は対応が速いという話 - U.S.A -

No.418/2012.10
ウベ・アメリカ・インク/ 若本 卓視
画:クロイワ カズ

アメリカの緊急通報用電話番号は、警察も消防も911です。「ナイン・ワン・ワン」という表現自体が緊急事態を意味します。

5年前の夏、2度目のアメリカ駐在が決まり、妻と中学生の娘、小学生の息子の3人で赴任しました。場所はミシガン州デトロイトの近郊。戸建ての家を借りました。
引越し荷物も収まり、漸く落ち着いたある日、子どもたちが新しい家具の品定めを始めました。悪戯好きの息子はあまり家具には関心がなく、テーブルの電話器に興味が移ります。一瞬、かすかな不安がよぎりました。

10分後、家の外でパトカーのサイレン。続いて、ピンポーンと玄関のベル。何事かとドアを開けると、そこにはプロレスラーまがいの警官が…。手には拳銃! 背後には5~6人の警官が拳銃を構えてこちらを窺っています。まるでアクション映画の一場面。

「お宅からナイン・ワン・ワンの通報があったが…」

ムキムキマンの偉丈夫が早口で訊いてきます。
どうやら、息子が電話器で遊んでいる拍子に911に繋がってしまったようです。

「ジャスト・ミステークです。ゴメンなさい」

平謝りに説明しますが、納得してくれません。パトカー数台が家の前に集まり、家捜しが始まりました。が、特に怪しいモノは見つからず、「子どもに電話器を触らせるな」と言い残して引き上げました。その間約30分。家の外に集まった野次馬も解散しました。

事態を察した息子は、絶対に911は押していないと弁解します。でも、9と1の組み合わせなら911に繋がるのです。
「ドント・タッチ!」電話器を指しながら、息子に英語で厳命して、一件落着となりました。