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満月の夜、無数の火の玉を見た話 - THAILAND -

No.426/2013.06
ポリマー開発センター/ 市村 晃司
画:クロイワ カズ

昨年11月、タイのラヨーンにある現地会社に出張したときのこと。仕事の後、会社の連中とホテルの屋上にあるビュッフェで夕食を取っていました。

眼の片隅に何か輝くものを感じました。視線をやると、大きな火の玉が夜空に浮んでいます。その夜は満月、まるで月に向かってゆっくりと飛んでいるようです。よく見ると、1つではありません。他にもいくつか飛んでいます。時間とともに火の玉の数はどんどん増えていきました。日本にも、水に提灯を浮かべる精霊(しょうりょう)流しというお盆の行事がありますが、ちょうど精霊を空に浮かべた感じです。異様な光景に驚いて現地の人に尋ねました。

タイではコムファイとかコムローイと呼ばれる一種の熱気球。底部は竹や針金で作り、そこに油を浸した紙や蜜蝋を固定。上部に大型の紙袋をつけて点火すると、空気の膨張で浮かび上がる仕組みです。大きなものでは直径1メートルを超えるものもあるそうです。英語では「スカイ・ランタン」と呼ばれています。毎年11月には「ローイクラトン」というお祭があり、チェンマイでは数千個のコムファイが飛ばされるそうです。

後日、ネットで調べてみると、チェンマイのローイクラトンは、2009年、大森美香監督の映画「プール」で紹介されたようです。異国で再会した母と娘がコムファイを見ながら語り合うシーン。

「最後はどうなるの」
「燃えつきてなくなるのよ」
「まるで命みたいだね」

何だか、とてもロマンチック。コムファイについて少し知識ができた今は、是非一度チェンマイのお祭を見てみたいです。