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旅先でスーツケースの鍵を失くした話 - INDIA -

No.433/2014.01
医薬品営業部/ 生野 謙
画:クロイワ カズ

2010年の秋、医薬品の仕事でT常務に帯同してインドに出張しました。スーツケースには仕事用の書類とお土産に買った日本酒が2本入っています。ムンバイの空港で無事通関を終えました。次は、国内線のチェックイン。その前に荷物検査があります。係員の指示でスーツケースを開けて日本酒の説明を始めたところで、我々のフライトは別のレーンだと気付きました。慌ててフタを締め、南京錠を下ろしたのですが、鍵が見当たりません。落としたようです。床が暗く、小さな鍵は直ぐには見つかりません。しゃがみこんで見渡してもよく見えない。手のひらで床を撫でるようにして探しました。横では、大きな身体のT常務が四つん這いになって、床を舐めるようにしています。10分ほど、2人で赤ちゃんのハイハイよろしく這いずり回りましたがダメでした。

「このままチェックを受けよう。開けろと言われれば壊すしかない」と、施錠したままチェックを受けました。幸い何のお咎めもなく、無事チェックインを完了。ホッとして近くのテーブルで一息ついていると、空港の職員でしょうか、制服を着たインド人が近づいてきました。

「これじゃないの? 近くに落ちていたけど…」と、手にした鍵を渡してくれました。見覚えのない、象のデザインのキーホルダーでしたが、折角親切に持ってきてくれたので御礼を言って受け取りました。

目的地の空港からはタクシーでホテルに直行。フロントで事情を話すと、直ぐに針金をもった男がやってきて目の前で開けてくれました。中を見ると、何と! 探していた鍵はスーツケースの中に落ちていました。更に驚いたことには、ムンバイ空港で貰った鍵でも簡単に開くのです。頼りない錠前に腹が立つやら嬉しいやらー。

貰った鍵は、今はメインのキーとして愛用しています。