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高い家賃の裏に「風水」ありという話 - HONG KONG -

No.453/2015.09
ナイロン樹脂ビジネスユニット/ 羽田 剛
画:クロイワ カズ

4年間香港に駐在し、昨年、単身で帰国しました。妻は息子の学校の関係でまだ向こうに居ます。

香港での生活は快適でしたが、物価は高いです。特に家賃は東京以上かもしれません。香港では戸建ては殆どなく、私のマンションも高層ビルでしたが、内装がイマイチの割には高い。中でも私の家は他と較べても高い。調べてみると「風水学」が関係していました。

香港は風水学では世界の先端を行くといわれ、風水は非常に重要視されます。土地が狭く不動産価格は高いのに空間のあるビルが目立ちます。香港を代表する高層建築の香港上海銀行(HSBC)本社ビルも空間を多く取り入れた設計です。これは、「気の流れ」を遮らないことが風水学では重要とされるからです。

また、HSBCビルの正面玄関にある2匹のライオン像は紙幣にも登場しています。ライオンは縁起がいいとされ、置物もよく見かけます。我が家でも玄関を入ったところにライオンの置物がありました。妻は香港育ちの風水マニア。私が勝手に位置を変えたりすると、たちまち大クレームです。

私は風水には全く関心がなく、香港の人たちがどうして古い因習に拘るのか不思議に思いました。実は、妻が選んだ我が家も風水では位置、方角などが申し分ないらしく、それで家賃も高いと聞きました。それにしては、柱やドアの建てつけは悪く、夜、寝室の照明を消すと、外の明かりでドアの形がクッキリ!歪んだ四角の輪郭をうらめしく眺めていました。

日本に帰ると、建物は機能的で無駄なスペースなどありません。私には快適なのですが、妻の顔を想い浮かべると、「気の流れ」が少し気になってきました。妻子が帰ってくるまでに、多少は空間のある家を選びたいと思います。